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弁護士がクライアントに求める証拠とは          

弁護士がクライアントに求める証拠とは          

著者 / 水野太樹

January 26,2023

1 弁護士は証拠を集める時にいくつかの視点を持っています。その中で,今回は,少し厳密さには欠けますが,直接証拠,間接証拠の視点から,弁護士がクライアントに求める証拠について解説します。

2 普段,ドラマや小説では,ある1つの決定的な証拠で事実関係が明らかになって勝敗が決するような場面が多いように見えるかもしれません。例えば,不倫相手がラブホテルに一緒に入っていく写真,不正な会計を記録した裏帳簿,犯行を撮影した防犯カメラの映像等。
 このような,裁判で立証したい事実を直接証明できる証拠,のことを直接証拠といいます。これがあれば訴訟においては相当有利なことが多いです。弁護士はまず,こういった重要な事実を証明するための直接証拠がないかを確認します。
 しかし,実際はこんな分かりやすい証拠はないから紛争になるのであり,その場合には次に説明する間接証拠からの立証を考えていきます。

3 間接証拠を考えるには,裁判官は「ストーリー」という長い線を求めていることを知っておくことが大切です。直接証拠が大事な「点」を直接証明するためので,間接証拠は,「点」どうしをつなげる「線」の部分を証明するためのもの,というイメージです。
 例えば,契約書がない,お金の貸し借りがあったか否かが問題となっている事件があるとして,お金を貸すに至る経緯,お金はどうやって用意したのか,貸した方法(現金or振込)などを確認していくことになります。
 こうした事情を確認することで,そういう事情なのであればありそうな証拠を確認していきます。例えば,話し合いをした際のメールのやり取り,実際に会って話したのであればその際に利用した喫茶店の領収書,現金を渡すためのお金をおろした際の通帳の履歴等。
 こういった「ストーリーを基礎づける事実関係」を証明できる証拠を集めることで,実際にそのようなストーリーが存在したことを示し,そこから最終的に証明したい事実関係の存在を示していくことになります。このとき,弁護士は,そうしたストーリーを相談者から聴取し,さらに,「聴取したストーリーを前提とすると存在しそうな証拠」を想像して,相談者から聞き取っていきます。弁護士が相談者から「ストーリー」を聞き出す理由はここにあり,弁護士が求める証拠としては,その「ストーリーを証明できる証拠」,ということができるでしょう。

4 以上,弁護士は,証明したい事実を直接証明できる証拠と,相談者の話すストーリーを証明できる証拠,を求めていると言えます。弁護士に相談に行く際には,参考にしてもらえれば幸いです。