紛争解決のために行う「仲裁合意」とは?メリット・デメリットも解説
January 26,2023
仲裁合意とは、裁判所ではなく第三者に仲裁を委ねて紛争を解決する手段
仲裁合意とは、民事上の紛争を解決するために、中立的な第三者(仲裁人)に判断を委ね、その判断に従う当事者間の合意を言います。
仲裁合意を行うと、原則として裁判所への訴訟提起はできなくなり、仮に訴訟提起しても却下されることになります。
仲裁合意は外国企業との取引で設定されるケースが多い
外国企業との取引では、仲裁合意が設定されることが多いです。
なぜなら、裁判を行うと、訴訟の提起をされた相手方にとって以下のような問題があるからです。
– 相手国での裁判のプロセスがわからない
– 裁判の言語が自国の言語ではない(よって相手国の言語を扱える弁護士が必要となる)
– 裁判に出頭することになった場合に渡航費や時間がかかりすぎる
このような問題を防ぎ、双方にとって公平な紛争解決方法を定めるために、仲裁合意がなされます。
仲裁のメリット-短期間で紛争解決が可能で、仲裁人を選定できる
仲裁のメリットは、裁判と比べて短期で紛争を解決できることです。日本における裁判は判決まで短くても1年、長いと4年以上かかることもあります。特に相手方が外国の企業であれば、書面の送達などの事務手続きに時間がかかり、あまり合理的ではありません。しかし、仲裁の場合は、2年以内に仲裁判断までなされる場合が多く、比較的短期間で紛争解決が可能です。
また、仲裁の場合は、当事者が仲裁人を選定することができます。裁判では、当事者が裁判官を選ぶことはできず、その業界のことを全く知らない裁判官に業界の高度な専門的判断をゆだねることになりかねません。しかし、仲裁であれば、その業界に精通した弁護士などを仲裁人に選ぶこともできます。
仲裁のデメリット-上訴などができず一発勝負で、手数料が比較的高額
仲裁のデメリットは、裁判と異なり、上訴などの手続きがとれないことです。つまり、裁判のような三審制ではなく一発勝負になるため、仲裁人の判断に不服があっても異議を唱えることが困難です。
また、仲裁は手数料が比較的高額です。例えば、1億円の請求のする場合、日本の裁判所における訴訟提起の手数料は32万円であるのに対し、仲裁の手数料(仲裁人への報酬)は1000万円以上となることもあります。
ただし、仲裁の手数料が高額であることは、逆に当事者が紛争を任意で解決する動機付けになるというメリットにもなります。すなわち、仲裁合意があると、紛争が発生しても「仲裁するとお金かかるから、なんとか話し合いで解決しよう」と考えるわけです。これは事実上の大きなメリットとして機能しています。