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形のない「秘密」を盗んで逮捕されるとはこれ如何に

形のない「秘密」を盗んで逮捕されるとはこれ如何に

著者 / 児玉政己

January 26,2023

先日,大手回転寿司チェーン「かっぱ寿司」運営会社の社長が,同業他社の仕入れデータ等の情報を不正に入手したとして逮捕されました。

我が国では,窃盗罪などの財産を対象にする犯罪は,原則として形のある物を対象にする場合のみ成立するものとされており,「情報」といった形のない物については,電気など,法律に明記されている場合に限り,例外的に犯罪を構成するものとされています。しかし,実は,他社の「営業秘密」を不正に取得することも犯罪を構成しうるものとされています。

このことは,「不正競争防止法」という,不正な競争行為を阻止できるようにすることで,事業者間の公正な競争を確保することを目的とする法律に定められていますが,同法では,「窃取,詐欺,強迫その他不正の手段により『営業秘密』を取得する行為」を不正競争行為に定めています。そして,当該不正競争行為を行った者に対しては,10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金又はこれらを併科されるという,重い罰則が定められています。

では,「営業秘密」とは何かというと,企業内の情報のうち,①秘密に管理されている②有用な情報であり,それが③公然と知られていないものをいうものとされています。法文上は,生産方法や販売方法が明示されていますが,卸価格や売上,顧客情報といった情報でも,上記3要件を充足すれば営業秘密に当たり得るでしょう。

企業においては,役員含め,人の入れ替わりが生じることは避けようがありません。そして,企業を離れた人物が,内部にいなければ入手しようがない情報を持っていってしまうということも,特に,情報の複製が容易になった現代においては容易に起こり得る事態といえます。

その際,不正競争防止法による保護を受けるためには,保護を受けたい情報について,上記「営業秘密」の要件を充足しておく必要があるため,企業内の情報管理において心がけておきたい重要なポイントになります。